指輪オケ回顧

もう二ヶ月も前になるんですが、3/22にTokyo Ring Orchestraに参加しておりました。

指揮の寺本先生をはじめとして、共演者のレベルも素晴らしく高く、気づきの多い良い体験だったのですが、時間が経つと色々忘れちゃう(すでに忘れてる)のももったいないのでいくつか備忘。

 

  • 当時メイン級のマウスピースは2つ用意しており、BestBrass神谷モデルGPとwillies Viento540☆(PGP)をケースに入れていました。この日はベストブラスを使ったのですが、やはり音色に艶が出る、高音域が圧倒的に当たるというメリットがある反面、カップの容積が小さいぶん音量の最大値はどうしても低くなりがちで、3管オーバーの大編成だとtuttiの最大音量で支えきれなくなるきらいがあるなと、闇雲に小さい方向にシフトしていた方向性を見直す一つのきっかけになりました。ただベストブラスを選択した理由もありまして、トップのジンさんが伝統的なタイプのドイツ管を吹いていたので、艶があって音量が大きくなり過ぎないキャラクターを狙ったというのもあり。実際この日のTBセクションはほんとに腕利き揃いで、セクションの響きのまとまりはとてもよいものだったと思います。そう考えると痛し痒しではあるのですが、現状の2つ道具のメリットデメリットを確認できたという意味では収穫でした。
  • 以下マエストロ寺本先生の話。こういった劇付随音楽の類をはじめとする表題性の強い音楽を演奏するときには、どうしても譜面そのものに込められたメッセージと、原作で使用された文脈のどちらかにしか目がいかない、ということになりがちなのですが、今回は細かい音楽の表現を原作の文学性に深く関わらせていたり、逆に求めるテンポ感や音色を奏者から引き出すために合奏中にも原作や有名作品のの印象的なシーンを例示してみたり(先生曰く「サービストーク」とのこと)。
  • 特に印象的だったのが、反行系のメロディが作中の水鏡を表現してるのではないかと思う(余談だけど、この話を聞いていたので4☆で逆転検事をやった時に、信のテーマが御剣のテーマの反行系になってる=二人の有り様の対比を表してるのでは?っていうアイデアに行きつけたんだと思う。そう思ってたら岩垂さんに合奏中「安易すぎるからもうちょっとひねればよかった」って言われてがくっときたけどw)っていう話。それからテーマのコラールなどには、小さくて特別な力があるわけではないホビット達が偉大なことを成し遂げたことに対する畏敬があるのだから、決して大騒ぎしたり尊大になってはいけなくて、ある種の節度を持って演奏するべきだという話。それから、この作品全体には最後には登場人物が皆去って行ってひとの時代に受け渡す、これが最後の旅なんだという寂しさが常につきまとっているという話。今も録音聞きながら書いてるんですが、終楽章ラストの一音ごとに遠ざかっていくようなcmollの和音は、もう本当に一発吹くごとに涙がこぼれそうになるのを抑えながら演奏していました。
  • 終演後(打ち上げにいけなかったので)そういったところが素晴らしかったと伝えたところ「結局良い演奏をすることが目的であって、そのために必要なアプローチをその時々に合わせて選んでいるに過ぎない。ある種の「方便」みたいな部分もある。」というお話が聞けて、非常に我が意を得たり、という気分でした。
  • もう一つその話の中で印象的だったのは「こういった文脈の強い演目を(客演指揮で)演奏する場合には、生半可な学びでは臨めない。それでは奏者はついてこない」という話。
  • せっかくなのでトロンボーンセクションについてもコメントを求めてみたところ「こちらからなにか言ったら確実に何かをやろうとしてくれる、意志を感じるいいセクションで、弄りがいがあって楽しかったし、頼りにもしていた。」というコメントがもらえたのがすごく嬉しかった。もちろんセクション全体がそうだった、という話なんですが、意志がある演奏というのは、僕が常にやろうとしていて、なおかつ共演者にも求めたいと思っている大事な要素なので、それをピンポイントで言ってもらえたことはすごく嬉しかったし自信にもつながりました。

今書いてて気づいたんだけど、今年の上半期は指輪と4☆っていう、ちょっと特殊な演目のオーケストラに結構がっちりコミットする(したつもりです、私自身としてはw)形で参加してたんだけども、指輪で学んだことを4☆に活かしていくっていう、いい勉強が出来たんではないかなと自分では思ってます。4☆の我ら来たれりでの曲全体の音量コントロールの仕掛けなんかに気づけたのも、多分指輪の終楽章コラールでの寺本先生の指摘を踏まえたからだと思うし。

とはいえ、4☆の記事はまた別に書きますので。

こうして振り返ると、やっぱり参加できて良かった本番だったなあと思います。

今までオンラインやお酒の席で?関わりはあったけど、一度ちゃんとして演奏会でご一緒したいね、と言っていた方ともご一緒できたり、Tbセクション始め腕利きの共演者の方たちとの出会いもあり。

そう考えると、最初に声をかけてくれたやまちゃん先生には本当に感謝してもしきれないです。ありがとうございます。自分の音楽人生の中で、ひとつのマイルストーンになるいい一日でした。皆様ありがとうございました。